借地権の手引き

借地の家が火事や取壊しでなくなったら 再築による期間の延長・解約の申入れ・旧法の朽廃

内容の確認日: 2026年11月4日

借地に建つ家が火事や取壊しでなくなっても、借地権は自動的には消えません。最初に確かめるのは、借地契約が旧借地法の時代のものか、借地借家法のものかです。借地借家法は1991年10月に公布され、翌1992年8月に施行されました。

借地借家法の契約では、建物がなくなった時期が期間の満了前か更新後かで、使う条文が分かれます。満了前は7条の再築による延長、更新後は8条の解約の申入れです。この記事は一般的な情報で、個別の判断は弁護士などの専門家にお願いします。内容は2026年11月4日に確認しました。

まず借地契約の時期を確かめる

解体工事が進む住宅の跡地
写真: Syced / CC0(Wikimedia Commons)

借地借家法の附則は、施行前に設定された借地権の扱いを分けています。建物の朽廃による消滅は、なお従前の例によるとされています(附則5条)。建物の滅失後に新しく建てたときの期間の延長も、同じく従前の例によります(附則7条1項)。さらに、借地借家法8条は、施行前に設定された借地権には適用されません(附則7条2項)。

ここでいう「従前の例」は、廃止された借地法(大正10年法律第49号)です。借地法は借地借家法の附則2条で廃止されました。つまり、1992年8月より前に設定された借地権の建物が滅失したときは、旧法の考え方が土台になります。契約書の日付、または地代の領収書にある契約開始の時期で、まずここを確かめてください。

施行前に設定された借地権の契約の更新は、なお従前の例によるとされています(附則6条)。更新を重ねた借地にどの条文が使われるかは、契約の経緯によって変わることがあります。旧法と新法の違いは更新料と地代の記事で説明しています。迷うときは、専門家に契約書を見てもらってください。

期間の満了前に建物がなくなった 借地借家法7条

東京・恵比寿で建設中の住宅
写真: Syced / CC0(Wikimedia Commons)

借地借家法7条1項は、借地権の存続期間が満了する前に建物の滅失があったときの定めです。滅失には、借地権者や転借地権者が自分で取り壊した場合も含まれます。借地権者が、残りの期間を超えて存続する建物を築造したとき、地主(借地権設定者)の承諾がある場合に限って、借地権は次のように延びます。

  • 承諾があった日と、建物が築造された日の、早いほうの日から20年間存続する。
  • ただし、残りの期間がそれより長いとき、または当事者がそれより長い期間を定めたときは、その期間による。

地主の承諾がなくても、7条2項に救済があります。借地権者が、残りの期間を超えて存続する建物を新たに築造する旨を地主に通知し、地主が通知を受けてから2か月以内に異議を述べなかったときは、承諾があったものとみなされます。

この2項には例外があります。契約の更新の後に通知した場合は、みなし承諾になりません。更新後の再築は、次の8条と18条の話になります。

承諾を得る場面では、承諾料の相談が出ることがあります。承諾料の目安と、地主が応じないときの借地非訟は、建て替えの承諾料の記事で説明しています。この記事では繰り返しません。

更新のあとに建物がなくなった 借地借家法8条

舗装や区画のない広い空き地
写真: Syced / CC0(Wikimedia Commons)

契約の更新の後に建物の滅失があったとき、借地借家法8条1項は、借地権者が地上権の放棄か、土地の賃貸借の解約の申入れをできると定めています。地上権の放棄、または解約の申入れがあった日から3か月を経過すると、借地権は消滅します(8条3項)。

反対に、借地権者が地主の承諾を得ないで、残りの期間を超えて存続する建物を築造したときは、地主のほうに権利が生じます(8条2項)。地主は、地上権の消滅の請求か、土地の賃貸借の解約の申入れができ、やはり3か月で借地権が消滅します。

更新後の再築の承諾を得られないときは、借地借家法18条の裁判所の許可を求める道があります。18条は旧法の借地権には適用されません(附則11条)。詳しい手続は、先ほどの建て替えの記事に譲ります。

建物を失った借地人にとって、8条は手放す道でもあります。建て直す意思がなければ、解約の申入れで借地権を終わらせられます。手放し方や更地での返還の考え方は、借地を返したいときの記事にまとめています。

再築するか手放すかは、借地の残りの期間、再建の費用、地主との関係で変わります。判断の前に、契約書と登記簿、地主との連絡の記録をそろえておきます。

建物がなくなったあとの対抗力は掲示と登記

京都市の工事現場に掲げられた看板
写真: TKdows 2026 / CC0(Wikimedia Commons)

借地権は、登記がなくても、借地上に借地権者が登記している建物があれば、第三者に主張できます(借地借家法10条1項)。建物がなくなると、この前提が崩れます。そこで10条2項は、掲示による保護を用意しています。

借地権者が、土地の見やすい場所に次の3つを掲示すれば、借地権は引き続き第三者に主張できます。

  1. 建物を特定するために必要な事項
  2. 建物の滅失があった日
  3. 建物を新たに築造する旨

期限があります。建物の滅失の日から2年を過ぎたあとは、その前に建物を新たに築造し、その建物を登記した場合に限ります。なお、施行前に建物が滅失していた場合は、この10条2項は適用されません(附則8条)。

焼けた建物や取り壊した建物の滅失登記も、あわせて必要になります。手続は建物滅失登記の記事に書きました。建物がなくなったときの掲示は、地主が変わったときの記事にも出てきます。

旧借地法の朽廃と、災害のときの特例

雪でつぶれた空き家
写真: Sgroey / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

旧借地法には、建物が朽廃したときに借地権が消滅するという定めがありました。借地借家法の附則5条が、この「朽廃による消滅」を従前の例によると書いています。借地法そのものの条文は、今回e-Gov法令検索では確かめられませんでした。

朽廃の程度については、国税不服審判所の裁決事例集(No.78、2009年10月23日の裁決)が、旧借地法2条を引いて述べています。建物が老朽化しても、その程度が朽廃にまで至らない限りは、借地権自体には影響がない、という説明です。「古くなった」だけでは、直ちに借地権は終わりません。

火事や取壊しによる滅失は、朽廃とは別の扱いです。法務省の資料は、旧借地法7条では地主の承諾が要件にならず、地主が遅滞なく異議を述べなければ、借地権は滅失の日から堅固な建物は30年、そうでない建物は20年存続すると説明しています。

災害による滅失には、特別の法律があります。かつては罹災都市借地借家臨時処理法(昭和21年法律第13号)があり、法務省の資料によると、優先借地権や借地権優先譲受権の仕組みを持っていました。この法律は、2013年の「大規模な災害の被災地における借地借家に関する特別措置法」(被災借地借家法)の附則で廃止されました。

新しい法律は、政令で指定された特定大規模災害にだけ適用されます。指定された災害に応じて、借地権者の解約の申入れ(3条)、対抗力の特例(4条)、賃借権の譲渡などの許可(5条)、被災地短期借地権(7条)などが使えます。e-Govで確かめた政令は1件で、東日本大震災について、福島県双葉郡大熊町を地区として、7条の措置を指定していました。それ以外の災害の被災地では、通常の借地借家法で考えることになります。

出典

いずれも2026年11月4日に確認しました。災害の指定は追加されることがあるため、被災したときは最新の政令を確かめてください。

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