借地権の手引き

借地権を売るときに地主の承諾は要るのか 承諾が得られないときの借地非訟と売却先

内容の確認日: 2026年11月3日

借地の上の建物を売ると、土地を借りる権利も一緒に買主へ移ります。借地権が土地の賃借権なら、この移転には地主の承諾が要ります。民法612条が、貸主の承諾なしに賃借権を譲り渡すことを禁じているためです。

地主が承諾しないときは、裁判所に「承諾に代わる許可」を求める道があります。借地借家法19条が定める手続きで、借地非訟と呼ばれます。裁判所は許可にあたり、地主へのお金の支払いを条件にできます。地主の側にも、建物と借地権を自分で買い取ると申し出る権利があります。この記事は一般的な情報で、個別の判断は弁護士などの専門家にお願いします。内容は2026年11月3日に確認しました。

承諾が要るのは賃借権を譲るから

借地借家法2条は、借地権を「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」と定めています。借地権には、地上権と賃借権の2種類があるわけです。

庭に囲まれた木造の平屋住宅
写真: lumoplank / CC0(Wikimedia Commons)

民法612条1項は、賃借権の譲渡に貸主の承諾を求めています。東京地方裁判所の借地非訟のページも、借地の上の建物を譲渡すると土地の賃借権も移るため、地主の承諾が要ると説明しています。

借地借家法19条も、対象を土地の賃借権に絞っています。まず契約書を開き、自分の借地権がどちらの種類かを確かめてください。

契約が平成4年8月1日より前に結ばれていても、この手続きは使えます。東京地裁のページによると、借地非訟は旧借地法の借地権と借地借家法の借地権の両方を扱います。

承諾なしに売るとどうなるか

民法612条2項は、承諾のない譲渡で第三者に土地を使わせたとき、貸主は契約を解除できると定めています。売主と買主だけで話を進めると、あとで地主との争いを抱えるおそれがあります。

通り沿いに建つ古い木造の長屋
写真: Suikotei / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

申立ての時期にも注意が要ります。19条1項は「建物を第三者に譲渡しようとする場合」と書いています。許可を求めるのは、売る前の段階です。みずほ中央法律事務所の解説でも、申し立てられるのは譲渡する側で、譲渡の前に限るとされています。

進める順番としては、まず地主に売りたいことを伝えて承諾を求めます。承諾料や譲渡後の地代も、この段階で話し合います。買主の候補が決まっていれば、その名前も伝えます。承諾が得られなければ、売買を終える前に許可を申し立てます。売買契約を先に結ぶ場合は、承諾か許可が得られなかったときの扱いを契約に入れておくと、買主との争いを避けやすくなります。

競売や公売で建物を買った人は、別の条文を使います。借地借家法20条は、買受人が建物の代金を払ってから2か月以内に、許可を申し立てるよう定めています。

地主が承諾しないときの借地非訟

19条1項の許可が出るのは、第三者が借りても地主に不利となるおそれがない場合です。裁判所は、残りの借地期間やこれまでの経緯、譲渡が必要な事情などを考えて判断します(19条2項)。

東京・霞が関の東京高等裁判所の庁舎
写真: 663highland / CC BY 2.5(Wikimedia Commons)

東京地方裁判所の「借地非訟事件について」のページには、手続きの流れがまとめてあります。主な点は次のとおりです。

  • 申立先は、土地のある地域の地方裁判所です。当事者が合意すれば、簡易裁判所にも申し立てられます。
  • 代理人に頼む場合、代理人は弁護士に限られます。
  • 申立ての手数料は、土地の固定資産評価額をもとに計算します。評価証明書の原本が要ります。
  • 第1回の審問期日は、申立てから1か月〜1か月半ほど後に開かれます。
  • 弁護士や不動産鑑定士など3人以上の鑑定委員会が現地を調べ、意見書を出します。その費用は国が負担します。
  • 多くの事件は、特別な事情がなければ1年以内に終わっています。

途中で和解や調停により終わることもあります。決定に不服があれば、決定書を受け取ってから2週間以内に即時抗告ができます。

地主には自分で買い取る権利がある

19条3項は、地主に「介入権」と呼ばれる権利を認めています。借地人が許可を申し立てると、地主は裁判所が定める期間内に、建物と賃借権を自分に譲るよう申し立てられます。

東京地方裁判所立川支部の庁舎
写真: Kakidai / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

この申立てがあると、裁判所は相当の対価を定めて、地主への譲渡を命じられます。東京地裁が公開している決定主文例にも、借地人に「代金○○円で譲渡せよ」と命じる形が載っています。

介入権の裁判があったあとは、どちらの申立ても双方の合意なしに取り下げられません(19条5項)。買主を見つけて申し立てても、結果として地主が買主になる場合があるわけです。買主の候補とは、この可能性を最初に共有しておくと行き違いを防げます。

売却先の選び方

借地権の売り先は、大きく3つに分かれます。地主の承諾の要否と、先に確かめる点を表にしました。

交差点から見た郊外の住宅地
写真: Peka / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

表は左右に動かして読めます。

売り先地主の承諾先に確かめる点
地主地主との合意で売買する価格の根拠
第三者承諾か、裁判所の許可が要る承諾料・地代の改定・介入権
地主と一緒に第三者へ地主と売り方をそろえる代金の分け方

地主に売る方法は、承諾や許可の手続きが要らず、話が早く進みやすい道です。その代わり買い手が一人に絞られるため、価格の根拠を自分で用意しておく必要があります。

第三者に売る方法は、買い手の幅が広がります。ただし承諾料の支払いや、許可の手続きにかかる時間を見込まなければなりません。介入権で地主が買い手になる可能性もあります。

地主と一緒に土地全体を売る方法では、買い手は借地権の付かない土地を手に入れます。代金を地主と借地人でどう分けるかを、売る前に決めておくことが前提になります。

どの売り先でも、話を始める前に次の書類をそろえておくと進めやすくなります。

  • 土地の賃貸借契約書(借地権の種類・最初の設定日・特約を確かめる)
  • 建物の登記事項証明書(建物の名義が自分になっているか)
  • 土地の固定資産評価証明書(借地非訟の手数料の計算にも使う)
  • 地代の支払いの記録

第三者に売る場合は、承諾料の決まり方を先に知っておくと交渉の土台になります。詳しくは譲渡承諾料・名義書換料の目安と決まり方にまとめました。

地主と組んで土地全体を売る方法や、借地権と底地を交換する方法は、底地を売る・買い取る・等価交換するで扱います。相続した借地権を売りたい場合は、借地権を相続したときも確認してください。

地主との話し合いが止まっているなら、借地に詳しい相談先に状況を話してみてください。許可の申立てが現実的かどうかが見えてきます。

出典

いずれも2026年11月3日に確認しました。法律事務所の解説は個別の事務所の見方で、裁判所の公式な基準ではありません。

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