借地権の手引き

借地を地主に返したい・手放したいとき 建物買取請求と更地返還

内容の確認日: 2026年11月4日

借地を地主に返す方法は、大きく3つあります。期間が満了して更新せずに終わらせる。地主と話し合って合意で解約する。建物を解体して更地にして返す。どれを選ぶかは、まず借地契約の内容で決まります。

期間が満了して更新がないときは、借地借家法13条で、建物を時価で買い取るよう地主に請求できます。この権利は契約の特約で借地人に不利にはできません。この記事は一般的な情報で、個別の判断は弁護士・司法書士・不動産鑑定士などの専門家にお願いします。内容は2026年11月4日に確認しました。

借地を返す3つの道筋

借地を手放したい理由は、建物が古くなった、住む人がいなくなった、地代の負担が重いなど、人によって違います。選べる道筋を、先に整理します。

建物に囲まれた更地
写真: Syced / CC0(Wikimedia Commons)
  • 期間満了で終わらせる: 借地権の存続期間が満了し、更新がない場合です。建物買取請求(13条)が使えます。
  • 合意で解約する: 期間の途中でも、地主と借地人が合意すれば終えられます。建物の扱いや金銭の精算は、話し合いで決めます。
  • 更地にして返す: 建物を取り壊し、土地を空けて返します。契約書の原状回復の条項と、民法の原則が基準になります。

地主に返す以外の道もあります。第三者に借地権を売る方法は借地権を売るときの承諾の記事、地主から底地を買う方法は底地の記事で扱っています。

最初に契約書で確かめる点

返す手続きの前に、契約書と地代の領収の記録を出して、次の点を確かめます。

机の上に開いたノートとペンと眼鏡
写真: Shixart1985 / CC BY 2.0(Wikimedia Commons)
  • 契約の時期: 借地借家法が施行されたのは1992年8月とされています(国土交通省の解説)。それより前に設定された借地権には、更新などについて従前の例による経過措置があります(借地借家法附則5条・6条)。契約が古い場合は、旧借地法が適用される部分があるため、専門家に確かめます。
  • 定期借地権かどうか: 存続期間50年以上の定期借地権では、更新や建物の築造による延長がなく、13条の買取請求をしない旨を特約で定められます(22条)。事業用定期借地権(23条)や、建物を地主に譲渡する特約付きの借地権(24条)もあります。この場合は、契約書の定めが結論を左右します。
  • 期間の定め: 期間の定めのある賃貸借は、解約する権利を留保していなければ、途中の解約を申し入れる根拠が民法にありません(民法618条は、解約権を留保した場合に617条を準用すると定めています)。途中で返したいなら、契約書に解約の条項があるかを見ます。なければ合意解約が中心になります。
  • 原状回復や建物の取り扱い: 返還時に建物を解体するか、地主に引き渡すかの定めがあるかを見ます。
  • 保証金・敷金: 返還の条件と時期を確かめます。

借地借家法9条と16条は、借地権者に不利な特約を無効とします。9条は更新などの節の規定に反する特約、16条は10条・13条・14条に反する特約が対象です。契約書に13条の請求を認めないと書いてあっても、定期借地権でなければ、そのまま通るとは限りません。

期間満了のときの建物買取請求

借地借家法13条1項は、借地権の存続期間が満了した場合において契約の更新がないときは、借地権者は借地権設定者(地主)に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るよう請求できる、と定めています。

通りに面した古い木造住宅
写真: NevinThompson / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

この規定を使う場面で、押さえておきたい点が3つあります。

  • 更新の仕組み: 期間が満了するとき、借地権者が更新を請求し、建物がある場合は、従前と同じ条件で更新したものとみなされます。地主が遅滞なく異議を述べたときは別です(5条1項)。地主の異議には、正当の事由が必要です(6条)。
  • 更新後の期間: 当事者が更新する場合の期間は、更新の日から10年です。最初の更新は20年です(4条)。
  • 買取の価格: 条文は「時価」と書いています。金額の決め方は条文にありません。

建物が期間満了前に、地主の承諾を得ないで、残りの期間を超えて存続するように新しく築造されていた場合は、裁判所は地主の請求により、代金の支払に相当の期限を許すことができます(13条2項)。1992年より前に設定された借地権には、この2項は適用されません(附則9条)。

条文は「更新がないとき」と書いています。借地人が自分の都合で更新を望まないときに、どう適用されるかなど、具体的な事情が絡む場面は、弁護士に確かめてください。

更地にして返すときの原状回復の考え方

建物を取り壊して土地を空けて返す方法です。契約書に「期間満了時は更地にして返還する」といった定めがあれば、それに従うのが基本です。

重機で木造住宅を解体している現場
写真: melvil / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

契約書に定めがないときの基準は、民法にあります。賃貸借には、使用貸借の規定が準用されます(622条)。借主は、借りた物に附属させた物を収去する義務を負います。ただし、分離できない物や、分離するのに過分の費用がかかる物は除かれます(599条1項)。借主が損傷を原状に復する義務(621条)は、通常の使用による損耗と経年変化を除きます。

実際に取り壊すかどうかは、費用の負担に直結します。解体費が大きい建物では、次の順に検討します。

  1. 地主が建物を使う、または買い取る意向があるかを聞く。
  2. 建物買取請求(13条)が使える場面かを確かめる。
  3. 使えない場合に備え、解体費の見積もりを取り、地主との精算に使う。

地主へ土地を引き渡す日と、地代を精算する日は、書面で決めておきます。

地主に打診するときの進め方

地面に埋められた境界標
写真: Osumi Akari / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

地主への連絡は、まず電話や面談で意向を伝え、そのあと書面にします。話し合いで決めておく項目は次のとおりです。

  • 返還する日(地代を精算する日)。
  • 建物を解体するか、地主が引き継ぐか。引き継ぐ場合の対価。
  • 解体費を誰が持つか。
  • 保証金や敷金の返還と、未払いの地代の精算。
  • 登記や電気・水道の手続きの分担。

合意ができたら、合意書を作ります。当事者の署名押印、日付、土地の所在と建物の特定を書きます。口約束だけにすると、あとで金額や期日が食い違いやすくなります。

金銭を受け取る場合の税金

借地権を地主に返して対価を受け取る場合の税金も、早めに確かめておきます。国税庁の質疑応答事例(借地権を第三者の法人に譲渡した例)は、借地権はあくまで借地人が従前から保有している資産で、譲渡代価は譲渡所得の収入金額になると説明しています。地主に返して受け取る金銭の扱いは、このページでは確かめられませんでした。譲渡所得の計算は、取得費などによって変わります。個別の事情によっては取扱いが異なるため、税務署か税理士に確かめてください。

地主との話し合いが進まない場合や、金額の目安をつかみたい場合は、借地権の専門家に相談する方法もあります。

出典

いずれも2026年11月4日に確認しました。

あわせて読む