借地権の譲渡承諾料・名義書換料の目安と決まり方 「10%」の出どころを確かめる
借地権を第三者に売るとき、地主の承諾と引き換えに借地人が払うお金を、譲渡承諾料や名義書換料と呼びます。この金額を決めた法律の条文はありません。基本は地主と借地人の話し合いで決まります。
よく聞く「借地権価格の10%」は、みずほ中央法律事務所などが解説の中で実務の目安として紹介している数字です。裁判所の公式ページに割合は載っていません。裁判所の手続きでは、鑑定委員会の意見を聴いて事件ごとに金額を決めます。この記事は一般的な情報で、個別の判断は弁護士や不動産鑑定士などの専門家にお願いします。内容は2026年11月3日に確認しました。
承諾料の額を定めた条文はない
呼び名は譲渡承諾料、名義書換料、名義変更料などさまざまです。みずほ中央法律事務所の解説では、これらは同じものを指すとされています。

民法612条は、賃借権の譲渡に貸主の承諾を求めています。ただ、承諾と引き換えにいくら払うかは書いていません。同事務所の解説も、承諾料は法律上の義務ではなく、承諾を得るための対価だと説明しています。
お金が条文に出てくるのは、裁判所が承諾に代わる許可を出す場面です。借地借家法19条1項は、当事者の利益の衡平を図るため、許可を「財産上の給付」に係らしめることができると定めています。ここでも金額や計算方法は書かれていません。
許可の手続きそのものは、借地権を売るときに地主の承諾は要るのかで扱っています。
「借地権価格の10%」の出どころ
みずほ中央法律事務所の解説では、標準的な事案の譲渡承諾料は借地権価格の10%とされています。根拠として、東京地方裁判所民事22部の運用や、東京地裁の昭和44年2月12日の裁判例、法律の注釈書が挙げられています。

同事務所は、ほかの借地非訟の承諾料についても目安を示しています。
| 場面 | 同事務所が示す目安 |
|---|---|
| 借地権の譲渡 | 借地権価格の10% |
| 借地条件の変更 | 更地評価額の10% |
| 増改築の許可 | 更地評価額の3% |
| 更新後の再築の許可 | 更地評価額の10% |
譲渡の相手が推定相続人の場合は、3%程度とする解説もあります。
10%を目安とする説明は、ほかの解説にも見られます。神田駿河台法律事務所の解説は、東京地裁の借地非訟では借地権価格の10%が標準とされているとしています。不動産鑑定士によるKRE Appraisalの解説も「借地権価格の10%程度」と言われるとしています。同じ解説は、この数字が当事者の交渉額を縛るものではないとも書いています。
一方、東京地裁のページは割合を示していません。公開されている決定主文例も「○○円を支払うことを条件として」と書くだけです。10%は法律家が説明する実務の目安で、裁判所が公表した基準ではない点に注意してください。
もとになる借地権価格の考え方
10%を掛けるもとの借地権価格を何で測るかによって、承諾料は大きく変わります。

みずほ中央法律事務所の解説では、承諾料の計算に使う借地権価格は、実際の取引で成り立つ価格を基準にするとされています。国税庁の路線価図にある借地権割合は、この実際の価格とずれやすいとも書かれています。
国税庁の借地権割合は、相続税や贈与税で借地権を評価するための数字です。路線価図ではAからGの記号で示され、Aが90%、Gが30%です。路線価を使った計算の例は借地権を相続したときに載せています。同事務所の解説どおり、実際の取引価格はこの計算と離れることがあります。路線価からの計算は、話し合いの最初の手がかりにとどめてください。
仮に借地権価格を2,000万円とすると、10%の目安では200万円になります。ただし借地権価格をいくらと見るかで、まず意見が分かれます。不動産鑑定士の評価を取る、近くの取引例を集めるなど、価格の根拠を持って話し合うことが出発点になります。
裁判所で金額が決まる流れ
話し合いがまとまらず借地非訟になった場合、承諾料の額は裁判所が決めます。

東京地裁のページによると、裁判所は鑑定委員会に意見を求めます。対象は、許可の可否、承諾料の額、地代の額、建物と借地権の価格などです。鑑定委員会は弁護士や不動産鑑定士など3人以上で、現地を調べてから意見書を出します。この意見書を当事者が読み、意見を述べたうえで決定が出ます。
裁判所が許可を出すかどうかを判断するときは、19条2項に従い、残りの借地期間やこれまでの経緯、譲渡が必要な事情などを考えます。承諾料の額も、こうした事情を踏まえて事件ごとに定められます。同じ地域の似た土地でも、金額が同じになるとは限りません。
鑑定委員会の費用は国が負担すると、東京地裁のページは説明しています。申立人が別に鑑定費用を用意する必要はありません。ただ、弁護士に代理を頼む場合はその費用がかかります。
公開されている決定主文例では、許可は「裁判確定の日から3か月以内」に一定の金額を払うことが条件になっています。同じ決定で、地代を許可の翌月から改定する例も示されています。承諾料だけでなく、地代が変わる可能性も見込んでおく必要があります。
話し合いで確かめたい項目
地主との話し合いでは、金額のほかにも決めておくことがあります。

- 承諾料の額と、その根拠にした借地権価格
- 支払いの時期と、支払う人(売主か買主か)
- 譲渡のあとの地代を変えるかどうか
- 買主が建て替える予定なら、建替えの承諾も同時に得るか
- 承諾の内容を書面に残すか
承諾が得られたら、口約束で済ませずに書面にしておくと安心です。承諾書には、譲り受ける人の名前、承諾料の額と支払日、譲渡後の地代、建替えの承諾の有無を書いておきます。買主にとっても、地主の承諾が書面で確かめられることは買う判断の材料になります。売買契約と承諾書の日付の順番も、仲介する業者や専門家と確かめておいてください。
建替えや増改築の承諾は、譲渡の承諾とは別のものです。借地借家法17条も、借地条件の変更や増改築の許可を19条とは別に定めています。買主が建て替えを考えているなら、両方をまとめて話すほうが手戻りが少なくなります。
相続で借地権を引き継ぐだけなら、承諾料の話にはならないとする解説もあります。借地権を相続したときで、遺贈との違いと合わせて確認してください。
地主から示された金額が妥当か分からないときは、借地に詳しい相談先で根拠を見てもらうと判断しやすくなります。
出典
- 借地借家法(e-Gov法令検索・デジタル庁) https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000090
- 民法(e-Gov法令検索・デジタル庁) https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 東京地方裁判所「借地非訟事件について」(第1 借地非訟とは) https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/minji-section22/minji-section22-mokuji-1/index.html
- 東京地方裁判所「借地非訟事件について」(第2 借地非訟事件手続の流れ) https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/minji-section22/minji-section22-2/index.html
- 東京地方裁判所(決定主文例・PDF) https://www.courts.go.jp/tokyo/vc-files/tokyo/file/Minji.22.04shubun.pdf
- みずほ中央法律事務所(借地権譲渡の承諾料の解説・2013年11月28日) https://www.mc-law.jp/fudousan/640/
- みずほ中央法律事務所(借地非訟の種類と承諾料の目安の解説) https://www.mc-law.jp/fudousan/653/
- 神田駿河台法律事務所(借地権の譲渡承諾料の解説) https://k-surugadai.sakura.ne.jp/guide/2019/10/17/jyoutosyoudakuryou/
- 株式会社KRE Appraisal(譲渡承諾料の解説・不動産鑑定士) https://kre-appraisal.com/shakuchi/topics/shoudakuryou-jouto/
- 国税庁(路線価図の説明) https://www.rosenka.nta.go.jp/docs/ref_prcf.htm
いずれも2026年11月3日に確認しました。承諾料の割合は法律事務所や鑑定会社が示す目安で、裁判所や国が定めた基準ではありません。