借地の地主が変わった・底地が業者に売られたとき 借地人が確かめること
借地の地主が変わっても、借地人の契約条件は原則として変わりません。借地権に対抗力があれば、賃貸人としての地位がそのまま新しい所有者に移ります。対抗力の中心は、借地上の建物が借地人の名義で登記されていることです。
確かめることは3つです。建物の登記、新しい所有者が誰か、地代の払い先です。この記事は一般的な情報で、個別の判断は弁護士・司法書士などの専門家にお願いします。内容は2026年11月4日に確認しました。
借地権の対抗力は建物の登記で決まる
借地権は、地主に対する権利です。土地を買った新しい所有者に対しても主張できるかどうかを、対抗力といいます。

借地借家法10条1項は、借地権は登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を持っているときは、第三者に対抗できると定めています。借地権そのものの登記がなくても、建物の登記があれば足ります。
確かめる点は次のとおりです。
- 建物の登記簿(登記事項証明書)に、借地権者本人の名前があるか。
- 建物を建て替えたり、相続したりしたあと、登記が古い名義のままになっていないか。
- 建物が火事などでなくなった場合は、建物を特定する事項、滅失日、新たに建てる旨を、土地の見やすい場所に掲示する(同条2項)。滅失から2年を過ぎる前に新築し、その建物を登記しないと、対抗力は残らない。
建物の名義が借地人本人でない場合や、相続のあと名義を変えていない場合は、対抗力が争われるおそれがあります。司法書士に登記の状態を確認してもらいます。借地権の相続については借地権を相続したらの記事で説明しています。
地主が変わると契約はどうなるか
民法605条の2第1項は、借地借家法10条などの対抗要件を備えた賃貸借で不動産が譲渡されたときは、賃貸人の地位が譲受人に移ると定めています。

ここから読み取れる点を整理します。
- 賃貸人の地位が移るため、新しい所有者が新たな地主として契約を引き継ぐ。条文には、契約の条件が変わるとは書かれていない。
- 地代や期間などの条件を変えるには、改めて当事者の合意が必要になる。新しい所有者が一方的に条件を変えることは、通常はできない。
- 敷金の返還に関する債務は、新しい所有者が引き継ぐ(民法605条の2第4項)。保証金などの扱いは、契約の内容で確かめる。
例外もあります。同条2項は、譲渡人と譲受人が合意すれば、賃貸人の地位を元の地主に残しておけると定めています。この場合、新しい所有者は元の地主に土地を貸し、元の地主が借地人の地主であり続けます。業者が土地を買ったのに、地代の払い先が変わらない場合は、この形かもしれません。
地代の増減を求める権利は、借地借家法11条に定められています。「近傍類似の土地の地代と比べて不相当になったとき」などに、将来に向かって請求できます。増額に合意できない間は、借地人は自分が相当と認める額を払えば足りるとされています(11条2項)。値上げの請求を受けても、すぐ全額を払う義務が決まるわけではありません。更新料と地代の記事に、調停までの流れがあります。
新しい所有者が誰かを確かめる
民法605条の2第3項は、賃貸人の地位の移転を借地人に主張するには、所有権移転の登記が必要だと定めています。そのため、新しい所有者が誰かは、土地の登記で確かめるのが確実です。

確かめる手順は次のとおりです。
- 法務局で、借りている土地の登記事項証明書を取る。窓口は管轄の法務局で、オンライン請求もできる。
- 所有者の欄に、新しい名義人が記載されているかを見る。
- 名義が変わっていたら、新しい所有者(会社)から、書面で通知を受ける。
法務省の案内では、登記事項証明書の手数料は、書面請求が1通600円、オンライン請求で送付を受ける場合が520円、窓口で受け取る場合が490円です(令和7年4月1日以降)。
地主から「所有者が変わりました」と電話や手紙だけで言われても、登記を見ないうちは、払い先を変えないほうが安全です。次の節で説明します。
地代の払い先を間違えないために
地代を誰に払うかは、トラブルになりやすい点です。所有権移転の登記がされたあとは、新しい所有者が賃貸人として地代を請求できます。古い地主に払い続けても、新しい所有者に対して払ったと主張できないおそれがあります。

気をつけることを挙げます。
- 新しい所有者から、書面で払い先の口座が通知されたら、登記の名義と照らして確かめる。
- 通知と登記の名義が合うまでは、これまでの払い方を続ける。変えるときは、変更日をはっきりさせる。
- 払った記録(振込の控え、領収書)を、新旧どちらの地主の分も残す。
- 相手に不審な点があれば、すぐ払わず弁護士や司法書士に相談する。
それでも誰に払えばよいか分からないとき、地代を供託する方法があります。民法494条は、債権者を確知できないときに供託できると定めています(借地人に過失がある場合を除く)。法務局の案内では、要件は、もとは特定の人に属していた債権について、事情が変わって債権者を確知できなくなったこと、そのことに借り主の過失がないことです。個別の事案ごとに判断されるため、供託を考えたら法務局か専門家に先に相談します。
業者から連絡が来たときの対応
底地が不動産業者に売られると、借地人に「借地権を買い取りたい」「底地を買わないか」と連絡が来ることがあります。応じる義務はありません。

- その場で答えず、書面で内容をもらう。
- 借地権を売る場合の地主の承諾は借地権を売るときの記事、底地を買う場合は底地の売却・買取の記事で説明している。
- 承諾料や名義書換料を求められたときの考え方は承諾料の記事にある。
- 契約書の内容を、弁護士や司法書士に見せてから決める。
話し合いの前に、次の書類を手元にそろえておきます。
- 借地契約書と、更新や条件変更をしたときの書面。
- 地代の領収書や振込の控え。
- 建物の登記事項証明書と、土地の登記事項証明書。
- 新しい所有者や業者から届いた通知書や手紙。
地主が変わったあとで、借地の契約をどうするかは、自分で決めてかまいません。急がず、登記と契約書を手元にそろえてから話します。借地権の相談窓口は、民間にもあります。
出典
- e-Gov法令検索「借地借家法」第10条・11条 https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000090
- e-Gov法令検索「民法」第494条・605条の2 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 法務省「登記手数料について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/TESURYO/
- 広島法務局「地主(家主)の死亡の通知を受けて、地代(家賃)の支払先が分からなくなった場合にする供託」 https://houmukyoku.moj.go.jp/hiroshima/static/05rent3.htm
いずれも2026年11月4日に確認しました。