借地権の手引き

借地の更新料は払う義務があるか 地代の値上げ・値下げ請求と調停の流れ

内容の確認日: 2026年11月3日

借地の更新料を払う義務を定めた法律の条文はありません。借地借家法は更新の仕組みを定めていますが、更新料には触れていません。法律事務所の解説では、契約に更新料の定めがなければ、支払い義務は否定される傾向にあるとされています。

借地借家法11条により、地主も借地人も地代の増額や減額を請求できます。話し合いでまとまらないときは、裁判の前にまず調停を申し立てる決まりです。この記事は一般的な情報で、個別の判断は弁護士などの専門家にお願いします。内容は2026年11月3日に確認しました。

借地の更新の仕組みと更新料

借地借家法5条は、期間が満了したときの更新を定めています。土地の上に建物があり、借地人が更新を求めたときは、前の契約と同じ条件で更新したものとみなされます。期間の満了後も借地人が土地を使い続けている場合も同じです。

瓦屋根の軒先と白壁
写真: Gnu-Bricoleur / CC BY 4.0(Wikimedia Commons)

地主がこれを止めるには、遅滞なく異議を述べる必要があります。しかも6条により、異議には正当の事由が要ります。正当の事由は、双方が土地を使う必要性や、これまでの経緯、土地の利用状況、立退料の申し出などを考えて判断されます。

つまり地主が更新を拒むのは簡単ではありません。立退料を申し出ることも、正当の事由を補う一つの材料として条文に書かれています。更新料を払わないことだけで、正当の事由が認められるとは限りません。

更新後の期間は、最初の更新が20年、2回目以降が10年です(4条)。合意で、これより長い期間を定めてもかまいません。

法律が定める更新は、更新料の支払いを条件にしていません。条文のどこにも、更新料という言葉は出てきません。

契約に更新料の定めがある場合

実際の契約書には、更新料の条項が入っていることがあります。この扱いは裁判例の積み重ねで決まってきました。

木々の下に建つ2階建ての古い長屋
写真: Suikotei / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

みずほ中央法律事務所の解説では、次のように整理されています。

  • 更新料の特約がなければ、払う義務はない。宅地の賃貸借について、最高裁昭和51年10月1日の判決が更新料の請求を否定したと紹介されています。
  • 更新料を払う商慣習や事実たる慣習は認められていない。
  • 合意で更新する場合の特約は、それだけで無効にはならない。ただし効力の及ぶ範囲は限られる。
  • 法律の規定による更新(法定更新)では、特約があっても支払い義務が否定される傾向にある。
  • 合意更新のときに自分の意思で払った更新料は、あとから返還を求めにくい。

契約で更新料を約束していた場合は別の注意も要ります。ダーウィン法律事務所の解説は、更新料の不払いを理由に契約の解除を認めた最高裁昭和59年4月20日の判決を紹介しています。更新料の支払いが契約の重要な要素になっていた事案とされ、不払いが必ず解除につながるわけではないとも書かれています。

更新料を求められたときは、次の点を順に確かめると整理しやすくなります。

  • 契約書に更新料の条項があるか。あるなら金額や計算方法まで書かれているか。
  • 今回の更新が、話し合いによる合意更新か、法律の規定による法定更新か。
  • これまでの更新で更新料を払ったことがあるか。そのときの金額の根拠は何だったか。
  • 地主が示す金額に、どんな根拠があるか。

裁判所の判例検索はこの記事の確認日に保守中で、判決の原文は開けませんでした。ここに書いた判例の内容は、同事務所の解説によるものです。自分の契約に当てはめるときは、契約書の文言を専門家に見てもらってください。

旧借地法の契約か借地借家法の契約か

借地のルールは、平成4年8月1日に旧借地法から借地借家法へ切り替わりました。それより前に結んだ契約は、今も一部で旧借地法の定めに従います。

江戸東京博物館に再現された大正期の長屋の玄関
写真: Daderot / CC0(Wikimedia Commons)

借地借家法の附則6条は、施行前に設定された借地権の更新について「なお従前の例による」と定めています。古い契約の更新後の期間などは、旧借地法の定めで決まるということです。前の章で挙げた4条の期間は、平成4年8月1日以降の契約に当てはまります。

附則4条は、新しい法律を施行前の事柄にも適用すると定めています。附則で旧法によるとされたのは、更新のほか、建物の朽ち果て(朽廃)や更新後の再築などです。地代の増減を定めた11条は、この例外に入っていません。

まず契約書で、借地権が最初に設定された日を確かめてください。更新を重ねていても、基準になるのは最初の設定日です。

地代の増額・減額の請求

借地借家法11条1項は、地代が不相当になったときの増減請求を定めています。理由として挙げられているのは、土地にかかる税金の増減や、土地の価格の上がり下がり、経済事情の変動、近くの似た土地の地代との比較です。

京都・祇園の町家が並ぶ通り
写真: Moja / CC BY-SA 3.0(Wikimedia Commons)

請求は将来に向かって効力を持ちます。契約の条件にかかわらず請求できますが、一定期間は増額しないという特約があれば、その期間は増額を求められません。

金額で争いになっている間の払い方も、条文で決まっています。

表は左右に動かして読めます。

場面争いの間金額が決まったあと
地主が増額を求めた借地人は自分が相当と考える額を払えばよい不足分に年1割の利息を付けて払う
借地人が減額を求めた地主は自分が相当と考える額を請求できる払い過ぎ分に年1割の利息を付けて返す

地主の側から見ると、11条の請求は契約を結び直さなくても使える仕組みです。ただし請求すれば言い値が通るわけではありません。最終的な額は、税金や土地の価格、近くの地代などから「相当」かどうかで決まります。請求する側は、固定資産税の通知書や周辺の地代の例など、根拠を集めてから示すと話が進みやすくなります。請求した日もあとで争いになりやすいため、日付が残る方法で伝えておくと安心です。

地主が地代の受け取りを拒むこともあります。その場合、民法494条により、法務局に供託して支払いを済ませる方法があります。地代を払わずにいると、民法541条による契約解除の理由になりかねません。

まとまらないときは調停から

地代の増減について裁判を起こしたい人は、まず調停を申し立てる必要があります(民事調停法24条の2)。調停を経ずに訴えると、裁判所は原則として事件を調停に回します。

東京簡易裁判所の庁舎の入口
写真: っ / CC BY-SA 3.0(Wikimedia Commons)

申立先は、土地のある地域の簡易裁判所です。当事者が合意すれば、地方裁判所にも申し立てられます(同法24条)。

調停の申立て後に当事者が書面で合意すれば、調停委員会が定める条項に従って解決する方法もあります(同法24条の3)。この条項は裁判上の和解と同じ効力を持ちます。

地代や更新料の負担が重く、借地を手放すことも考えるなら、借地権を売るときの地主の承諾と底地の売却・買い取り・等価交換も読んでみてください。地主から更新料や値上げを求められて迷っているなら、借地に詳しい相談先で契約書を見てもらうと、支払う必要があるかどうかを判断しやすくなります。

出典

いずれも2026年11月3日に確認しました。更新料の判例は裁判所の判例検索が保守中で原文を確認できず、法律事務所の解説から引いています。

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