借地権の手引き

借地の地代を滞納したら 催告解除・信頼関係破壊の法理と、地主が受け取らないときの供託

内容の確認日: 2026年11月4日

借地の地代を滞納しても、すぐに借地権がなくなるとは限りません。民法541条は、相手方が相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に払わなかったときに契約を解除できると定めています。催告の期間内に払えば、この解除は成り立ちません。

地主が地代を受け取らないときは、法務局の供託所に供託する方法があります。ただし、先に支払いを提供しておく必要があり、方法を誤ると供託が無効になるおそれがあります。この記事は借地人の側から、滞納したときと受け取ってもらえないときの流れを説明します。この記事は一般的な情報で、個別の判断は弁護士などの専門家にお願いします。内容は2026年11月4日に確認しました。

地代が遅れたときに民法が定めていること

東京都杉並区の公園沿いに並ぶ低層住宅
写真: Ximonic (Simo Räsänen) / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

地代は賃料の一種です。民法614条は、宅地の賃料は毎月末に支払うと定めています。契約書に別の支払日があるときは、その定めが先です。支払日を過ぎれば履行が遅れた状態になり(民法412条)、金銭の債務では遅延損害金の問題も出ます(民法419条)。法定利率は年3%を出発点に、3年ごとに見直される仕組みです(民法404条)。契約に利率の定めがあれば、それが優先します。

地主が契約を解除するには、原則として催告が要ります。民法541条は次のように定めています。

  • 相手方が、相当の期間を定めて履行を催告する。
  • その期間内に履行がない。
  • 期間が過ぎた時点での不履行が、契約と取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、解除できない。

催告なしで解除できる場合は民法542条に列挙されています。債務者が履行を拒絶する意思を明確に示したときなどです。地代を数日遅らせただけで、この条文にあたるとは読めません。

契約書に「地代を滞納したら催告なしで解除できる」という趣旨の特約があるときもあります。こうした特約が実際にどこまで効くかは、事情によって判断が分かれます。契約書の文言だけで諦めず、専門家に見てもらってください。

信頼関係破壊の法理と最高裁の判決

東京・霞が関の東京高等裁判所の庁舎
写真: 663highland / CC BY 2.5(Wikimedia Commons)

借地は長く続く契約です。解除が認められるかどうかは、当事者の信頼関係が壊れたかどうかを見て判断する考え方があり、「信頼関係破壊の法理」と呼ばれます。

最高裁判所第一小法廷の昭和47年11月16日判決(民集26巻9号1603頁)は、裁判所のサイトで裁判要旨が公開されています。要旨は、賃貸借の当事者の一方が信義則上の義務に違反して信頼関係を破壊し、賃貸借関係の継続を著しく困難にしたときは、他方は催告なしで解除できる、というものです。

この判決の事案は地代の滞納ではありません。建物所有を目的とする土地の賃借人が、借地の約半分にあたる空き地をトラックの置き場にし、無免許で自動車運送事業を営んでいた、という使い方をめぐるものです。裁判所は、近隣から苦情が出ていないことなどの事情から、解除を認めませんでした。

地代の滞納そのものを扱った最高裁判決は、今回の調査では裁判所のサイトで確かめられませんでした。そのため、「何か月滞納したら解除される」「何か月までなら大丈夫」といった数字は、この記事には書きません。条文にも、上の判決の要旨にも、そうした数字は出てきません。

確かめられたのは、次の二点です。

  • 解除には、原則として催告と相当の期間が要る(民法541条)。
  • 催告が要らない場合があるとしても、裁判所は信頼関係が壊れたかどうかを個別の事情で見る(昭和47年判決の要旨)。

地主が受け取らないときは供託を考える

奈良地方法務局葛城支局の庁舎
写真: Suikotei / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

地代を持参しても地主が受け取らないとき、民法494条1項は、弁済の提供をしたのに債権者が受領を拒んだ場合に、弁済者が債権者のために弁済の目的物を供託できると定めています。供託をした時に、その債権は消滅します。

法務省の供託Q&Aと広島法務局の案内から、押さえる点を並べます。

  • 受領拒否: 支払期日に、契約に沿った方法で地代を提供することが先です。民法493条は、弁済の提供は債務の本旨に従って現実にするのが原則だと定めています。民法484条は、別段の定めがなければ債権者の現在の住所で弁済するとしています。たとえば地主の現在の住所地に持参して、受け取りを求めます。地主が応じなかったとき、「受領拒否」で供託できます。
  • 値上げ要求だけでは足りない: 値上げを求められただけでは、受領拒否が明確とはいえません。原則として弁済の提供が要ります。
  • 提供が要らない場合: 地主が明渡しの訴えを起こしているなど、受け取らないことが明らかなときは、提供なしで供託できることもあります。
  • 数か月分: 各月分を提供したのに受領を拒まれたのなら、数か月分をまとめて供託できます。
  • 供託する場所: 賃貸借契約上の支払地の供託所です。「地代・家賃弁済供託用」の供託書を使い、オンラインでも申請できます。
  • 通知: 供託した人は、遅滞なく債権者に通知しなければなりません(民法495条3項)。

地主が行方不明で受け取れないときは「受領不能」、地主が亡くなって相続人が分からないときなどは「債権者不確知」が供託の原因になります。「債権者不確知」では、借地人に過失がないことが条件です。地主が代わった場合の確かめ方は、地主が変わったときの記事で説明しています。

法務省のQ&Aには、注意すべき点も書かれています。借地人が一方的に減額した額は、地主に受領を拒まれても、その額では供託できません。また、供託しても争いが終わるわけではありません。訴訟で別の額が正しいとされれば、差額を払う必要があります。方法が不適法だと供託が無効になるおそれもあります。

地代の増額で争っているとき

カバーを外した旧式のハードディスク
写真: Zzubnik / パブリックドメイン(Wikimedia Commons)

地主から地代の増額を求められ、金額で折り合えない場面があります。借地借家法11条2項は、増額について協議が調わないときは、請求を受けた借地人は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代を支払えば足りると定めています。

ただし続きがあります。裁判が確定して、すでに払った額に不足があれば、不足額に年1割の利息を付けて支払います。「相当と認める額」は、自分で決めるだけではなく、根拠のある額にしておきます。

相当と認める額を払ったのに地主が受け取らないときは、前の節の供託につながります。増額や減額の請求の仕組み、調停の流れは更新料と地代の記事で説明しています。

催告状が届いたとき・払えないときの進め方

大阪高等裁判所と大阪地方裁判所の庁舎
写真: KishujiRapid / CC BY 4.0(Wikimedia Commons)

催告状が届いたら、次の順に動きます。

  1. 催告状の日付、滞納額の内訳、支払期限を確かめる。
  2. 契約書で、地代の額、支払日、支払方法を確かめる。
  3. 自分の支払いの記録(通帳、領収書)と、催告の金額を突き合わせる。
  4. 期限内に払える額を払う。払い方は、振込や書留など、あとから証拠が残る方法にする。
  5. 払えない事情があるときは、期限の前に地主へ書面で伝える。
  6. 受け取ってもらえないときは、提供の記録を残して供託を検討する。

催告の金額が自分の計算と違うときも、放置は避けます。争いのない部分だけでも先に払い、残りを確かめます。

地代の滞納や、借地権そのものの扱いで迷うときは、早めに専門家へ相談します。借地権の相談は、お住まいの地域の弁護士会や自治体の法律相談の案内からも探せます。

借地権を手放して地主に返す方法は返したいときの記事に、借地権を売る場合は売却と承諾の記事にまとめました。

出典

いずれも2026年11月4日に確認しました。供託の方法は法務局ごとに案内が異なることがあるため、支払地を管轄する供託所に事前に確かめてください。

あわせて読む