借地権の手引き

底地を売る・買い取る・借地権と等価交換する 地主と借地人それぞれの選択肢と税金

内容の確認日: 2026年11月3日

借地権の付いた土地(底地)は、地主と借地人のどちらか一方が相手の権利をまとめて持つと、ふつうの土地として扱えるようになります。地主の側には、底地を借地人や第三者に売る道と、借地権を買い取る道があります。借地人の側には、底地を買い取る道と、借地権を売る道があります。

もう一つの方法が、借地権と底地の一部ずつを交換する等価交換です。国税庁は、条件を満たせば固定資産の交換の特例が使えるとしています。この記事は一般的な情報で、個別の判断は弁護士や税理士などの専門家にお願いします。内容は2026年11月3日に確認しました。

底地と借地権の関係

借地では、一つの土地に二つの権利が重なっています。地主が持つ所有権(底地)と、借地人が持つ借地権です。

建物のない広い空き地
写真: JunK / Public domain(Wikimedia Commons)

国税庁は相続税の評価で、底地を「貸宅地」と呼びます。評価額は、自用地としての価額から、その価額に借地権割合を掛けた額を引いて求めます。借地権割合が60%の地域なら、底地の評価はふつうの土地の40%です。

借地人は、借地の上に自分名義で登記した建物を持っていれば、借地権を新しい地主にも主張できます(借地借家法10条1項)。底地が第三者に売られても、借地人はそのまま住み続けられるわけです。

このため底地だけを買う人は、自分で土地を使えません。手に入るのは地代を受け取る権利と、将来の更新や売却の話し合いの立場です。底地の売り値が低くなりやすいのは、この事情によります。

地主が取れる選択肢

地主が底地を整理するときの選択肢は、主に次の4つです。

重機で木造住宅を解体している現場
写真: melvil / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

表は左右に動かして読めます。

方法相手先に確かめる点
底地を借地人に売る借地人借地人に買う意思と資金があるか
底地を第三者に売る買取業者など借地人との関係はそのまま続く
借地権を買い取る借地人建物の扱いと価格の根拠
借地人と一緒に土地全体を売る第三者代金の分け方

底地を第三者に売ること自体には、借地人の承諾は要りません。民法612条が承諾を求めているのは、借りる側が賃借権を譲るときです。ただ、新しい地主との関係が始まるため、借地人には事情を伝えておくほうが無用な摩擦を避けられます。

借地人が借地権を第三者に売ろうとして許可を申し立てた場合、地主には自分が買い取ると申し出る介入権もあります(借地借家法19条3項)。くわしくは借地権を売るときに地主の承諾は要るのかで扱っています。

借地人が取れる選択肢

借地人の側にも、同じように複数の道があります。

京都・祇園の町家が並ぶ路地
写真: lumoplank / CC0(Wikimedia Commons)
  • 底地を地主から買い取る。土地が完全に自分のものになり、地代や更新の話し合いがなくなります。
  • 借地権を地主に売る。地主との合意だけで進められます。
  • 借地権を第三者に売る。地主の承諾か、裁判所の許可が要ります。
  • 地主と一緒に土地全体を第三者に売る。
  • 借地権と底地の一部ずつを交換する。

第三者に売る場合は、承諾料の負担も見込む必要があります。目安と決まり方は譲渡承諾料・名義書換料の目安と決まり方にまとめました。

路線価を使った借地権と底地の計算の例は借地権を相続したときに載せています。ただし相続税の評価の計算は、取引の価格を決めるものではありません。

どの方法でも、相手との価格の話し合いが中心になります。相続税の評価額は話し合いの手がかりにはなりますが、実際の取引の価格とは別物です。不動産鑑定士の評価を取るなど、価格の根拠をそろえてから話を始めると進めやすくなります。

等価交換と税の特例

等価交換は、一つの土地を地主と借地人で分け、それぞれが更地として持つ方法です。借地人は借地権の一部を地主に渡し、代わりに底地の一部を受け取ります。地主はその逆です。

福岡法務局の庁舎
写真: そらみみ (Soramimi) / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

国税庁のタックスアンサーNo.3505は、借地権は土地と同じ種類の資産に含まれるとしています。そのため底地の一部と借地権の一部の交換は、土地と土地の交換になります。ほかの条件も満たせば、所得税法58条の交換の特例を受けられます。この特例を使うと、交換による譲渡はなかったものとされます。

No.3502が挙げる主な条件は次のとおりです。

  • 交換に出す資産を1年以上持っていた。
  • 受け取る資産も相手が1年以上持っていて、交換のために取得したものではない。
  • 受け取った土地を、交換前と同じ用途(宅地なら宅地)に使う。
  • 二つの資産の時価の差が、高いほうの時価の20%以内に収まる。
  • 確定申告で特例を申告する。

No.3505には、時価1億円、面積800平方メートル、借地権割合60%の土地を等価交換する例が載っています。図では借地権全体を6,000万円、底地全体を4,000万円とし、借地人が480平方メートル、地主が320平方メートルを更地として持つ形になっています。6対4の割合で面積を分けた計算です。実際には道路への接し方などで価値が変わるため、分け方は測量と評価を踏まえて決めます。

交換で差額のお金(交換差金)を受け取ると、その分は特例の対象外となり、課税されます。

等価交換は、手順の多い方法です。土地を測って分ける線を決め、分筆の登記をし、それぞれの土地の所有権を移します。借地人の建物が分ける線をまたいでいれば、建て替えや取り壊しの計画も要ります。地主と借地人の双方が専門家を交えて、順番を決めてから進めると手戻りが少なくなります。

売ったときの税金

底地や借地権を売って利益が出ると、譲渡所得として所得税がかかります。土地や建物の譲渡所得は、給与などとは分けて計算する分離課税です。

高松国税局の庁舎
写真: KishujiRapid / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

国税庁のタックスアンサーNo.1440によると、税率は持っていた期間で変わります。

表は左右に動かして読めます。

区分所有期間所得税の税率
長期譲渡所得売った年の1月1日時点で5年を超える15%
短期譲渡所得売った年の1月1日時点で5年以下30%

譲渡所得の金額は、売った代金から取得費と譲渡費用を引き、さらに使える特別控除を引いて求めます。所得税と併せて、復興特別所得税(基準所得税額の2.1%)も申告して納めます。

借地権を売ったときの細かな扱いや、取得費が分からない場合の計算は、税理士に確認してください。相続した借地権の評価は借地権を相続したときで説明しています。

底地と借地権のどちらを持つ側でも、相手との話し合いに入る前に、相場と選択肢を専門の相談先で整理しておくと判断しやすくなります。

出典

いずれも2026年11月3日に確認しました。等価交換の面積の分け方は国税庁の例の図によるもので、実際の分け方は個別の評価で決まります。

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